なぜ今、高配当株に注目が集まっているのか?不安定な相場にこそ強い理由
日銀の金融政策が長期的に転換期を迎える中で、安定したインカムゲインを求める個人投資家が急増しています。特に、一定の配当金を継続的に支払っている企業の株式、いわゆる高配当株は、株価の変動を受けにくい「守りの資産」として注目されています。
たとえば、都内に住む40代の会社員Bさんは、「配当利回り7%」という言葉に魅力を感じて特定の銘柄に集中投資しましたが、結局株価が下落し、含み損を抱えてしまいました。このように、表面的な利回りの高さだけで判断すると、かえって損失リスクが高まるのです。この記事では、初心者が高配当株に取り組む際に知っておくべき基本戦略を、実例を交えながら解説します。
1. 配当利回りよりも配当性向を確認せよ
高配当株を選ぶ際、多くの初心者は「配当利回り」だけを重視する傾向にあります。しかし、利回りが高くても、業績悪化による株価下落が原因である場合もあり、実際の収益性は低いことがあるのです。より重要なのは配当性向(企業の利益に対する配当金の比率)です。
- 一般的に40〜60%の配当性向は健全とされる
- 100%を超える場合、配当の持続性に疑問あり
- 業績低迷期にも安定して配当を維持するかを確認
2. 配当実績の長い企業を選ぶ
10年以上連続で減配・無配をしていない企業は、財務基盤が強く、安定したキャッシュフローを持っている可能性が高いです。日本国内では、NTT、花王、JTなどがその代表例です。米国市場では、コカ・コーラやP&Gのような「配当貴族(Dividend Aristocrats)」が知られています。
日本取引所グループの2024年の調査によると、東証一部上場企業のうち、5年以上連続で配当を実施している企業は全体の約30%程度にとどまります。長期的な視点での安定配当企業選びは、高配当株投資の要です。
3. 業種による配当の安定性の違いに注意
同じ高配当株でも、業種によって配当の安定性は大きく異なります。景気敏感業種(鉄鋼、建設、輸送など)は、景気変動によって業績が左右されやすく、配当が不安定になることもあります。一方で、通信やインフラ、食品といったディフェンシブ銘柄は、景気に左右されにくく、安定的な配当が期待できます。
- ディフェンシブ業種(通信、公益、医薬品)→配当安定性高
- 景気循環業種(自動車、素材、機械)→配当の変動が大きい
4. 配当基準日・権利確定日を正確に把握する
配当金を得るには、権利確定日に株を保有している必要があります。そのためには、権利付き最終日の前営業日までに株式を購入しなければなりません。初心者がよくある誤解は「配当落ち日に買っても配当がもらえる」と思うことです。
- 権利確定日:配当金を受け取る権利が確定する日
- 権利付き最終日:この日までに株を購入すれば配当が得られる
- 日本ではT+2(取引から2営業日後の受渡し)ルールが適用
証券会社のアプリ(SBI証券、楽天証券、松井証券など)には「配当カレンダー」機能があるため、事前に確認して計画的に取引を行いましょう。
5. 分散投資とリバランスでリスクを抑える
高配当株も株式である以上、市場の変動リスクや業績リスクに晒されています。したがって、複数銘柄への分散投資が基本です。さらに、半年~1年ごとにポートフォリオを見直し、リバランスを行うことでリスクをコントロールできます。
- 業種別・国内外の分散を意識
- ETFの活用(例:NEXT FUNDS高配当70、上場インフラファンドなど)
- 定期的な評価とリバランス基準を設定
6. 高すぎる配当利回りには注意せよ
配当利回りが8%、10%を超える銘柄は魅力的に見えますが、株価下落によって利回りが見かけ上高くなっている可能性があります。このような「利回りトラップ」には要注意です。
実際に、某電力関連企業では利回りが11%を記録したことがありますが、これは業績悪化で株価が急落した結果であり、配当金自体は横ばいでした。利回りだけでなく、配当の持続可能性と財務の健全性を見極めることが不可欠です。
7. 税制と為替リスクにも目を向ける
日本国内株式の配当には20.315%の税金が源泉徴収されます。また、外国株式の場合、現地国で課税された後に日本で申告が必要になる場合もあり、二重課税のリスクもあります。
- 国内株式:20.315%の源泉徴収
- 米国株:現地で10~15%課税 → 日本での確定申告にて外国税額控除可
- 為替の影響で実質利回りが大きく変動する可能性あり
特にドル建てで配当を受け取る場合、円高・円安によって受取額が大きく変わるため、為替ヘッジ付きのETFなども選択肢に入れると良いでしょう。
8. 高配当ETFの活用は初心者に最適
個別銘柄の選定が難しい初心者には、高配当ETFを通じた分散投資が非常に有効です。国内では「日経高配当株50ETF」「J-REIT ETF」など、一定の基準に基づいた銘柄構成がされている商品が人気です。
ETFは定期的に構成銘柄の見直し(リバランス)も行われ、管理の手間が少なく、初心者でも継続しやすい投資手段として有用です。ただし、信託報酬(0.1~0.3%)などのコストや分配方針は事前に確認しましょう。
9. 配当金の再投資で複利効果を最大化
配当金を現金で使ってしまうのではなく、再度同じ銘柄やETFに再投資することで、長期的な資産成長が期待できます。これが「配当再投資戦略(DRIP)」です。米国では一般的な仕組みであり、日本でも一部証券会社が対応しています。
仮に年4%の配当を20年間再投資し続けた場合、元本の約2.2倍まで増加する計算となります。短期売買では得られない、着実な資産形成手法として活用すべきです。
10. まずは投資の目的と戦略を明確にすること
高配当株は、「配当で生活したい」「老後の資産を守りたい」など明確な目的がある人に向いています。利回りを追い求めるのではなく、「安定的なキャッシュフローを得る」という本質を理解して投資すべきです。
ファイナンシャルプランナーの多くは、全体ポートフォリオの20~30%程度を高配当株で構成するのが望ましいとアドバイスしています。目的に応じた比率と投資期間をしっかり設計しましょう。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資行動を推奨するものではありません。実際の投資に際しては、ご自身の判断と責任で行ってください。税制・銘柄選定について不明な点があれば、税理士・FPなど専門家への相談を推奨します。