血糖値を正しく測るために:食前・食後の測定ポイントと実践ガイド

血糖値の正確な測定は、糖尿病の予防とコントロールの第一歩です。特に、食前と食後の血糖値は、体がどれだけうまくブドウ糖を処理できているかを知る重要な手がかりとなります。このガイドでは、これから血糖管理を始める方に向けて、日本国内の実情に合わせたわかりやすい測定方法と生活の中で実践できるヒントをお伝えします。

血糖値とは?その意味と重要性

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。食事、運動、ストレス、睡眠などの影響を受けて変動します。日本糖尿病学会の指針によると、以下が一般的な正常範囲です:

  • 空腹時血糖値:70〜99 mg/dL
  • 食後2時間血糖値:140 mg/dL 未満

これを超える数値が続く場合、インスリン抵抗性や糖尿病予備軍、あるいは2型糖尿病の可能性が高まります。

なぜ食前・食後の測定が重要なのか?

血糖値を適当に1日1回測っても意味はありません。特に、食前と食後の変化を把握することで、インスリンの分泌状態や体内代謝の異常を早期に見つけることができます。

  • 食前(空腹時)血糖:体の基礎的なインスリン分泌能力を把握
  • 食後2時間血糖:食事後の血糖上昇への反応を確認

日本糖尿病学会でも、空腹時が正常でも食後高血糖があるケースが見逃されやすく、両方の測定が重要であるとされています。

空腹時の測定:正しいタイミングと手順

空腹時の測定は、8時間以上何も食べていない状態で、朝起きてすぐが理想です。

測定手順:

  1. 手を温かい水で洗い、完全に乾かす
  2. 血糖測定器と新しいセンサー(試験紙)を準備
  3. 指先の側面を穿刺して血を採取
  4. 試験紙に血液をつけ、数値を確認

ポイント:手が冷たいと血が出にくくなるため、手をこすったり温水で温めてから行うと良いでしょう。

食後の測定タイミング:なぜ2時間後が基準か

食事開始からちょうど2時間後が、血糖が最も高くなるタイミングです。この時間に測定することで、ブドウ糖に対する体の処理能力(インスリンの効果)を正確に評価できます。

:昼食を12:00に食べ始めた場合、14:00に測定します。

1時間後に測る方もいますが、医学的な比較や記録に用いるには2時間後が基準となっています。

どの指で測るべきか?痛みの少ない部位

基本的に指先を使用しますが、薬指、小指、親指の側面が痛みが少なくおすすめです。人差し指や中指は神経が多く敏感です。

また、毎回同じ指を使わず、左右交互に使うことで皮膚への負担を減らせます。

測定値の読み方と基準値

測定タイミング正常値注意が必要な範囲
空腹時70〜99 mg/dL100〜125 mg/dL(空腹時高血糖)
食後2時間140 mg/dL 未満140〜199 mg/dL(耐糖能異常)

200 mg/dL以上であった場合、糖尿病の疑いが高まりますが、自己測定だけでの判断は避け、HbA1cや75g経口糖負荷試験(OGTT)などの医療機関での検査が必要です。

初心者が陥りやすい測定ミス

以下のような誤りが、正確な血糖値の把握を妨げます:

  • 手を洗わずに測定して食品の糖分が混ざる
  • 試験紙の期限切れや高温多湿での保管ミス
  • 血液量が不足し正確に測れない
  • 測定器の校正ミス(近年の製品は自動校正が多い)

こうしたミスを避けるだけで、数値の信頼性が大きく向上します。

測定記録の取り方:手書き vs アプリ

血糖値の記録は、医師の診断や自身の変化の把握に重要です。

日本国内で活用されている方法:

  • 紙の記録帳:日付、時刻、食事内容、血糖値を手書き
  • スマートフォンアプリ:「Welbyマイカルテ」「シンクヘルス」などの血糖管理アプリ
  • Bluetooth対応機器:スマホ連携で自動記録が可能

通院時のデータ共有にも便利で、治療の精度が向上します。

どのくらいの頻度で測るべきか?

糖尿病でない人でも、週に1〜2回の空腹時と食後測定が推奨されます。異常が見られたら医療機関へ相談を。

糖尿病患者の場合:

  • インスリン使用者は1日3〜4回が理想
  • 食前・食後・就寝前や、めまい・倦怠感などの症状があるとき

厚生労働省の報告によれば、自己測定の頻度が高い人ほど血糖コントロールが良好である傾向があるとされています。

食事以外の要因も血糖に影響

血糖値は食事だけでなく、運動、睡眠、ストレスの影響も大きく受けます。

事例:東京都健康長寿医療センター研究所による研究では、食後に20分のウォーキングを行った場合、血糖値の上昇幅が30〜40 mg/dL抑えられることが報告されています。

その日の生活状況を合わせて記録することで、より正確な体調管理が可能になります。

最後に:完璧を求めるより、継続を大切に

血糖測定を始めたばかりの人は、最初はうまくいかないことも多いですが、毎日コツコツと測定・記録を重ねることが大切です。

一回一回の数値に一喜一憂せず、長期的な傾向を把握していきましょう。それが健康管理の基盤となります。