犬を迎え入れることは喜ばしい出来事ですが、それに伴い多くの責任も生じます。その中で最も重要な初期対応の一つが、初めての動物病院での健康診断です。この診察は、愛犬の将来の健康管理を計画する上で基盤となり、潜在的な疾患を早期に発見するためにも欠かせません。
実際の例として、千葉県で保護された雑種の子犬が、譲渡後すぐに動物病院で診察を受けたところ、フィラリア症(犬糸状虫症)と診断されました。見た目には健康そうに見えていたものの、すでに感染が進んでいたのです。早期発見により、命に関わる事態を防ぐことができました。このようなケースを踏まえ、初診で必ずチェックしておきたい7つの項目を紹介します。
1. バイタルサイン(体温・体重・心拍・呼吸数)
バイタルサインは、感染症や脱水、ストレスなどの異常を見極めるための基本データです。
- 平均体温:38.3〜39.2℃
- 心拍数:小型犬で100〜160回/分、大型犬で60〜100回/分
- 呼吸数:安静時で10〜30回/分
診察前に、食欲・活動量・便の状態を数日間観察しておくと、獣医師による診断の参考になります。
2. 口腔内の健康と歯の発育状況
生後6か月前後は乳歯から永久歯への生え変わり時期です。二重歯列や歯石、口臭が見られる場合は早めの対処が必要です。
日本小動物歯科研究会のデータによれば、国内の犬の80%以上が3歳までに歯周病の兆候を示していると報告されています。
- 乳歯の残存や歯並びの異常を確認
- 歯茎の炎症や口臭の有無をチェック
- 専用歯磨き粉やデンタルガムを活用し、習慣づけを開始
3. 皮膚・被毛の状態確認
皮膚は体内状態の「鏡」と言われます。脱毛、かゆみ、赤み、ふけなどがあれば、寄生虫やアレルギー、ホルモン異常の可能性があります。
- 発疹、腫れ、色素沈着の有無を確認
- 耳の中をチェックし、炎症や耳ダニの兆候を探す
- アレルゲン低減のシャンプーや専用ケア用品を併用
日本では「フロントライン」「ネクスガード」「シンパリカ」などの製品が広く使われており、動物病院での処方が一般的です。
4. 便の状態と肛門腺の異常
便の形状や色、においは消化機能のバロメーターです。粘液便や血便、軟便がある場合は消化器トラブルや寄生虫感染を疑う必要があります。
- 排便頻度・形状・色を把握し説明できるようにする
- 検便を通じて回虫や鉤虫、条虫をチェック
- お尻を床に擦りつける行動があれば、肛門腺の詰まりの可能性も
日本国内の動物病院では、検便の費用は1,500円〜3,000円程度が相場で、便は新鮮な状態で密閉容器に入れて持参します。
5. フィラリア症・内部寄生虫の検査
フィラリア症は日本でも特に温暖な地域(九州、四国など)で多く見られ、蚊によって媒介されます。血液検査で早期に発見することが可能です。
- 抗原検査でフィラリア感染の有無を確認
- 検便による内部寄生虫(回虫・鉤虫など)の同時チェック
- 日本小動物獣医師会の推奨に基づき、3か月に1回程度の定期駆虫を
室内飼育であっても、外出や他の動物との接触を通じて感染リスクはあります。
6. ワクチン接種履歴と追加接種
初診では、ワクチン接種の記録をもとに今後の追加接種計画を立てます。保護犬など履歴不明な場合は抗体検査を行うこともあります。
- 基本ワクチン:ジステンパー、パルボ、アデノウイルス、狂犬病など
- 任意ワクチン:レプトスピラ、ケンネルコフ、犬インフルエンザなど
- 過去の副反応がある場合は事前に必ず申告
日本では公益社団法人日本獣医師会によるワクチンプログラムが参考基準とされています。
7. 生殖器および筋骨格系の発達
オス犬の場合、陰睾(睾丸が降りていない状態)がないかを確認。メス犬は外陰部の腫れや感染兆候を確認します。また、骨格や関節の発達状態もこの時期にチェックが必要です。
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)や股関節形成不全を早期発見
- 適切な避妊・去勢の時期について相談
- 必要に応じてグルコサミンなどの関節サプリメントを導入
急な運動や階段昇降は控え、散歩や遊びも過剰にならないよう配慮が必要です。
初めての動物病院受診は、単なるルーチンではなく、愛犬の健康寿命を左右する大切なスタート地点です。飼い主が積極的に観察・質問・記録を行うことで、より質の高い予防管理が可能になります。
日本では、ペトこと、アニコム損保アプリ、みるペットなどのアプリを使って、ワクチン接種記録、通院予約、健康チェックを効率的に管理できます。