「ベジタリアン」と一言で言っても、実はこんなに多様
ベジタリアンという言葉を聞くと、「肉を食べない人」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実際には、その中に含まれる食生活のスタイルや信念は多岐にわたります。動物愛護や環境保護を目的とする人もいれば、健康維持のために選ぶ人もいます。
そして、ヴィーガン、ラクト・ベジタリアン、オボ・ベジタリアン、ペスカタリアン、フレキシタリアンなど、それぞれ異なる食材の可否基準が存在します。本記事では、日本国内でも関心が高まりつつある各タイプのベジタリアン食の違いを整理し、読者が自分に最適な食スタイルを見つける手助けをします。
ヴィーガン(完全菜食主義者)は何を避ける?
ヴィーガンは最も厳格な菜食スタイルで、肉・魚・卵・乳製品・蜂蜜など、すべての動物性食品を排除します。さらに、食品に限らず、革製品や動物実験を行う化粧品の不使用など、ライフスタイル全体にわたる倫理的選択でもあります。
日本では大都市を中心に、ヴィーガンメニュー対応のレストランやカフェが徐々に増えてきており、アプリ「Vegewel」や「HappyCow」などで簡単に探せます。また、植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルク、オーツミルクなど)の市場も拡大しています。
ラクト・ベジタリアン(乳製品可)の特徴
ラクト・ベジタリアンは乳製品は摂取するが、肉・魚・卵は食べないというスタイルです。特にインドなどのヒンズー教文化圏で一般的で、動物の命を奪うことなく生産される牛乳やチーズなどは許容されます。
日本国内では、乳製品を使った和菓子や洋菓子、チーズやヨーグルトを含む料理が豊富であり、このスタイルに適した食事も比較的取り入れやすいでしょう。
オボ・ベジタリアン(卵可)は何が違う?
オボ・ベジタリアンは卵はOKだが、乳製品・肉・魚はNGという選択です。乳製品の生産過程での動物搾取に疑問を持つ人が、比較的倫理的とされる卵だけを許容するケースが多いです。
朝食に卵焼きや目玉焼きはOKでも、チーズや牛乳は控えるという、非常に明確な境界が存在します。卵はタンパク質源として優秀で、栄養バランスを取りやすい利点もあります。
ラクト・オボ・ベジタリアン(乳製品と卵可)の柔軟さ
ラクト・オボ・ベジタリアンは乳製品も卵も摂取可、ただし肉・魚は避けるという、最も普及している菜食スタイルです。西洋を中心に主流で、日本でもダイエットや健康管理を目的に始める人が多い傾向があります。
例えば、グラタンや卵サンド、チーズリゾットなど、日常的に摂取しやすく、日本食とも親和性があります。栄養的なリスクも少なく、長期的な継続がしやすいことが特徴です。
ペスカタリアン(魚可)は健康志向の選択肢
ペスカタリアンは魚介類は食べるが、肉類は食べないというスタイルです。英語の「Pescatarian(pescado=魚)」が語源です。オメガ3脂肪酸やビタミンB12など、ベジタリアンでは不足しやすい栄養素を補える利点があります。
日本は魚食文化が根付いており、寿司や刺身、焼き魚、海藻などの料理が日常的に手に入るため、このスタイルは特に実践しやすいと言えます。
ポーヨ・ベジタリアン(鶏肉のみ可)はあり?
ポーヨ・ベジタリアンは鶏肉だけを摂取し、その他の肉類・魚介類は排除する食スタイルです。ポーヨ(pollo)はスペイン語で鶏肉を意味します。完全な菜食とは異なりますが、赤身肉の摂取を避けたい人に選ばれています。
日本ではコンビニ弁当やファミレスなどでも鶏肉中心のメニューが多く、比較的取り入れやすいタイプです。ただし、倫理的な観点ではベジタリアンと見なされない場合もあります。
フレキシタリアン(柔軟な菜食)は現代的スタイル
フレキシタリアンは基本的に植物性中心の食生活を送りつつ、時に肉や魚を摂る柔軟なスタイルです。固定的なルールはなく、健康状態や外食シーンに応じて柔軟に対応します。
日本でも「平日はベジタリアン、週末は家族と焼肉」といったライフスタイルが浸透しつつあります。継続しやすく、健康と食の楽しみを両立させるための選択として注目されています。
フルータリアン(果食主義者)はどこまで制限する?
フルータリアンは果物・ナッツ・種子のみを摂取し、野菜・穀物・加工食品すら避けるという極端なスタイルです。自然に落ちた果実のみを食べるという思想を持つ人もいます。
極端な栄養制限があるため、日本の栄養学的観点では長期継続は推奨されておらず、健康面でのリスクが高いとされています。ヨガやスピリチュアル志向の一部に支持されていますが、一般的には実践困難です。
ローフード・ヴィーガンは「非加熱主義」
ローフード・ヴィーガンはヴィーガン食の中でも、加熱温度を48℃以下に抑える食生活です。調理による酵素や栄養の損失を防ぐという理論に基づいています。
主にサラダ、スムージー、ナッツ、発酵食品が中心で、日本でも「ローフードカフェ」やレシピ本などが増えつつあります。ただし、ビタミンB12や鉄分の欠乏に注意が必要です。
ベジタリアン生活を成功させるには?
自分に合ったスタイルを見つけるには、健康状態・生活習慣・倫理観に合った柔軟な選択が重要です。いきなり完全ヴィーガンになる必要はなく、まずは週数回の菜食から始める「ミートレス・マンデー」などの取り組みも効果的です。
また、日本の厚生労働省や日本栄養士会も、植物性中心の食生活が生活習慣病予防に寄与することを示しています。ただし、極端な制限を避けるために、サプリメントや栄養士のアドバイスも併用しましょう。
栄養管理と専門家のアドバイスは不可欠
ビタミンB12、鉄分、亜鉛、オメガ3脂肪酸など、特定の栄養素は動物性食品を避けると不足しやすくなります。特にヴィーガンやローフードの実践者は、定期的な健康診断やサプリメントの利用を前提にした食生活が望まれます。
最近では、動物性食品を使わないプロテインやビタミン強化食品も多く登場しており、上手に取り入れることが継続の鍵です。