日本やアジア各国でペットと共に暮らす家庭が増えており、犬や猫を飛行機で移動させる機会も年々多くなっています。海外旅行、引っ越し、出張など、愛するペットを安全に連れていくには事前準備が不可欠です。単に航空券をもう1枚買えばいいという話ではありません。各航空会社や国によって異なるルールがあり、トラブルを避けるためには正確な情報と段取りが求められます。本ガイドでは、日本国内および海外へのペット航空輸送に必要な手順と注意点を詳しく解説します。
航空会社のペット輸送ルール比較
航空会社ごとにペットの取り扱いは異なり、大きく分けて機内持ち込み、受託手荷物(貨物室)、貨物便の3つに分類されます。ペットの大きさ、体重、犬種によって利用可能な方法が決まります。
- ANA(全日空):原則として機内には同伴できず、専用コンテナに入れて貨物室へ預ける形が基本
- JAL(日本航空):体重やサイズに応じて貨物室での輸送に対応。手続きには事前予約が必要
- LCC(Peach、ジェットスターなど):多くの場合ペット輸送には非対応
予約時点でペット同伴である旨を申告し、詳細条件を確認することが必須です。
機内同伴と貨物室輸送:どちらが適しているか?
日本の大手航空会社はペットの機内持ち込みを認めていないことが多いため、多くのケースで貨物室での輸送となります。
- 機内持ち込み(国際線や外国航空会社利用時):
- ペット+キャリーの合計が7〜8kg以下
- ソフトタイプのキャリーで足元に収納できるサイズ
- フライト中はキャリーから出せない
- 貨物室輸送:
- 最大重量45kg程度(航空会社による)
- 短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)は熱中症リスクのため制限されることがある
特に夏季・冬季は温度条件によって受託が不可となる場合があるため、時期の選定も重要です。
渡航に必要な書類と動物検疫の流れ
出国・入国時に必要な手続きや書類は国によって異なり、日本からの出国には「動物検疫所」での手続きが必要です。少なくとも1ヶ月前から準備を開始しましょう。
- マイクロチップの装着:ISO規格準拠のチップを装着し番号登録
- 狂犬病ワクチン接種証明書:有効期間内の接種証明が必須
- 輸出検査証明書(動物検疫所発行):空港にある動物検疫カウンターで手続き
- 渡航先国の条件:例:オーストラリアは180日以上の待機期間を要し、アメリカは比較的緩やか
農林水産省動物検疫所の指針に基づき、全てのステップを確実に準備することが推奨されています。
適切なキャリーバッグの選び方
キャリーバッグは単なるケースではなく、安全性と規格を満たした必需品です。IATA(国際航空運送協会)の基準に準じた製品を選ぶ必要があります。
- ソフトキャリー(機内用):通気性が良く、吸水パッド付き、ジッパーで完全に閉まるもの
- ハードケース(貨物用):頑丈なプラスチック製、二重ロック、側面に十分な通気口
- 慣れさせる時間:1〜2週間前からキャリー内で過ごす練習をしておく
2023年、成田空港にて基準に合わないキャリーを使用していたために搭乗を拒否された事例がありました。事前準備の重要性が伺えます。
前日・当日のチェックリスト
出発当日の混乱を避けるためにも、事前に落ち着いた環境で準備を進めることが重要です。
前日:
- 軽めの食事にする
- 十分な水分補給
- キャリー内で就寝させる練習
当日:
- 散歩で気分転換させる
- 飼い主の匂いがついたタオルをキャリー内に入れる
- 出発4時間前以降は食事を控える
空港施設内では原則、動物はキャリー内から出してはいけません。
フライト中のペットの快適性対策
機内での環境は動物にとって大きなストレスになります。音、振動、気圧変化などへの対策が必要です。
- 鎮静剤の使用:必ず獣医師の指導のもとで行うこと(自己判断は危険)
- トイレ用パッドや消臭シート:機内での粗相対策
- イヤーカバーやリラックスおやつ:音に敏感な動物には有効
日本獣医師会でも、鎮静剤は副作用の懸念があるため慎重な対応を呼びかけています。
到着後の検疫と対応
入国時には、書類確認とマイクロチップの読み取りを含む検疫が行われます。
- 一般的な流れ:
- 書類提出
- マイクロチップ確認
- 審査後、入国許可
- 検疫の厳しい国:
- ニュージーランド、オーストラリア、英国、日本などは検疫や待機期間がある
事前に領事館や獣医師に相談し、必要な対応を確認しておきましょう。
ペット連れ旅行に役立つアプリ・サービス
旅の計画をスムーズにするために、次のようなツールが便利です。
- ペットとおでかけ(日本):ペット可の宿泊施設、飲食店、交通機関を検索可能
- どうぶつ検疫ナビ(農水省):検疫予約、書類申請、各国の輸出入条件に対応
- Pet Friendly Map:世界中のペット対応施設を検索可能な地図アプリ
海外旅行時や乗り継ぎの多い行程では特に役立ちます。
フライト後のケアと注意点
移動後の動物は一時的に体調や行動に変化が現れることがあります。
- 静かで慣れた空間で休ませる
- 食事や遊びのルーティンを戻す
- 異常が続く場合は動物病院へ
まとめ:ペットと飛行機に乗るのは、正しく準備すれば決して難しくありません。信頼できる情報と段取りで、安全な旅を実現しましょう。