コンクリート製ベランダの防水・断熱、DIYで本当にできる?失敗しない9ステップ完全チェックリスト

夏は湿気とカビ、冬は結露と冷気。それはベランダから始まる家全体の快適性を左右する問題です。特に築年数の経ったマンションや団地に多いコンクリート構造のベランダでは、防水と断熱が不十分であることが珍しくありません。

専門業者に頼めば安心ですが、費用が10万円以上かかるケースもあり、最近ではDIYでベランダを改修する人が増えています。しかし、作業手順や素材選びを誤ると、かえって湿気やカビの原因になるため、慎重な計画と知識が不可欠です。

このガイドでは、実際の施工経験に基づき、誰でも実践できる「ベランダ防水・断熱DIY」9ステップのチェックリストを詳しく解説します。

1. 作業前の点検:ひび割れ・湿気・カビの有無を確認

最初にやるべきことは、現状の診断です。既に発生している不具合を無視して塗料や断熱材を重ねても、長持ちはしません。以下の点を丁寧にチェックしましょう。

  • ヘアクラック(微細なひび割れ)があるか
  • シーリング材の隙間や端部にカビや剥がれが見られるか
  • 床面が常に湿っている、または濡れた跡があるか

国土交通省の住宅ストック統計によると、築30年以上の集合住宅のうち、約62%がベランダや外壁の防水・断熱性能に不備があると報告されています。

2. 掃除と乾燥:表面処理が仕上がりのカギ

防水も断熱も、下地処理が仕上がりを左右します。表面に埃や油分が残っていると、接着力が落ち、すぐに剥がれてしまいます。基本手順は以下の通りです。

  • 掃除機やブラシで埃を除去
  • エタノールやアセトンで油汚れを拭き取り
  • 古いシリコンはカッターで完全に撤去
  • 清掃後、最低24時間は自然乾燥

冬場はヒーターや除湿機を併用して乾燥時間を短縮するのも一案です。市販の「YAMAZEN除湿器」など家庭用モデルでも十分効果があります。

3. クラック補修:シーリング材と補修剤の使い分け

クラック(ひび割れ)の放置は最大の失敗要因です。必ず補修しましょう。ひびの幅に応じて使用する材料が異なります。

  • 1mm未満:ウレタンシーラントで埋める
  • 1mm以上:エポキシ補修剤やモルタルで埋めてからシーリング

作業後は24時間以上乾燥させ、完全に固まってから次の工程に進むことが重要です。

4. プライマー塗布:密着力を高める下地処理

プライマー(接着補助剤)は省略されがちですが、DIY成功のカギを握る重要な工程です。特に防水塗料の持続性を大きく左右します。

  • ローラーや刷毛で均一に塗布
  • 塗布後は最低4時間以上放置して乾燥

ホームセンターや「カインズオンライン」で販売されている「水性プライマー」などが一般的に使われています。

5. 一次防水:防水塗料の塗布

この段階でベランダを水分から守る一次防水層を作ります。選択肢は主に次の2つです。

タイプ特徴おすすめ用途
ウレタン系防水材柔軟性と耐久性に優れる床面・壁面全体
セメント系防水材耐熱性が高く施工も簡単外壁や高温箇所

ベランダの床から壁の立ち上がりまで一体的に塗布し、特に角部は刷毛で丁寧に仕上げます。最低でも2回塗りが推奨され、48時間以上の乾燥期間が必要です。

6. 断熱材の貼り付け:XPSボードまたはフェノールフォーム

断熱材は防水後に施工します。順序を誤ると内部に湿気がこもり、カビの原因になります。主に次のような素材が使われます。

  • XPS(押出し発泡ポリスチレン)ボード:価格が安く入手性が高い
  • フェノールフォームボード:難燃性に優れ、やや高価

接着剤を裏面に塗布し、全体を均等に押し当てて貼り付けます。壁と床の接合部もすき間なく施工するのがポイントです。

7. 二次防水:断熱材の上からコーティング

断熱材の上にさらに防水コーティングを施し、室内側からの湿気侵入を防ぎます。おすすめ素材は以下の通りです。

  • ポリウレア系塗料:高価格だが防湿効果が極めて高い
  • アクリル系水性塗料:DIYに最適、安全性も高い

2回以上の重ね塗りが望ましく、端部や隙間には補強用テープ(コーキングテープなど)を併用します。

8. 仕上げ材の施工:デコタイルや防水シートで美観も強化

見た目と実用性を兼ね備えた仕上げが最終工程です。以下の方法が一般的です。

  • 床にはデコレーションタイルや防水シートを使用
  • 貼り付け前に専用プライマーや接着剤で下処理

市販の「東リ」製デコタイルは1平方メートルあたり約1,500円程度と手頃で、カッターで簡単に加工できます。

9. 定期点検とメンテナンス:半年に一度は状態チェック

施工後も定期的なチェックが重要です。以下の項目を基準に、半年ごとの点検をおすすめします。

  • シーリング部にひびや剥がれがないか
  • 断熱材の裏側に湿気の跡がないか
  • 塗膜に剥がれや変色が見られないか

初期の変化に気づけば、部分補修で済ませることができます。点検リストを作っておくと安心です。

事例紹介:DIYで費用1万円以下、結露ゼロを実現

千葉県船橋市のMさんは、築25年のマンションで冬の結露と夏の湿気に悩んでいました。思い切ってDIYに挑戦し、XPSボードやウレタン塗料などを使用。材料費はおよそ8,800円で、施工時間は週末2日間でした。施工後は結露がなくなり、暖房効率も上がったといいます。

まとめ:DIY成功のための5つのポイント

  • 一次防水 → 断熱 → 二次防水の順番を厳守
  • プライマーと接着剤は相性を確認
  • 角部や隙間は重点的に施工
  • 乾燥時間は守る、急ぎすぎない
  • 不安な場合は部分的に専門家に依頼も検討

ベランダの防水・断熱は「快適さ」だけでなく、建物の資産価値を守る要素です。正しい知識と手順をもとに行えば、DIYでも十分な効果を得ることができます。


本記事は生活改善を目的とした情報提供であり、建築関連の資格が必要な施工は専門業者への相談をおすすめします。