動画が止まる、ページがなかなか開かない、オンライン会議が切断される——。こうしたインターネットの遅さによる問題は、娯楽だけでなく、在宅勤務や学習、日常生活全体に支障をきたす可能性があります。本記事では、日本の家庭や職場でよく見られるインターネット速度低下の原因を網羅的に整理し、実際に役立つ具体的な解決策を紹介します。
家では速いのに、会社では遅い？その理由とは
「自宅ではサクサクなのに、オフィスではとにかく遅い」という声はよく聞きます。これは回線契約の問題というより、ネットワーク環境の設計や運用方法に原因があります。
- ルーター1台に複数の端末が集中接続
- 古いルーターや配置が悪いことで電波が弱くなる
- 壁や機器の干渉によって電波の到達が妨げられる
企業ではVLANやQoS（通信品質制御）を用いて通信の優先順位を設定していますが、家庭でもWi-Fi 6対応のルーターを活用すれば同様の機能を簡易的に使うことができます。
インターネットが遅くなる主な10の原因
1. 古いプランを使い続けている
まだADSLや低速な光コースを使っている家庭も少なくありません。総務省の調査によると、日本の光回線の平均契約速度は1Gbpsですが、実測値が100Mbpsを下回る家庭も多く存在します。
2. ルーターが古い、または配置が悪い
5年以上前のルーターは最新のWi-Fi規格（Wi-Fi 5やWi-Fi 6）に対応していない可能性があります。さらに、棚の中や床に置かれていると電波が遮られやすく、接続品質が落ちます。
3. LANケーブルの規格や劣化
Cat5ケーブルでは最大100Mbpsまでしか対応できません。1Gbps以上の高速通信にはCat6またはCat7ケーブルが必要です。日本国内では1,000〜2,000円程度で入手可能です。
4. デバイスが古い、またはOS・ドライバーが未更新
5年以上前のノートPCやスマホでは最新のWi-Fiに対応していなかったり、内部処理が追いつかないことがあります。ドライバーやOSの更新も忘れずに行いましょう。
5. バックグラウンドアプリやマルウェア
Google Drive、Dropbox、自動アップデートなどが裏で通信をしており、帯域を圧迫していることがあります。セキュリティソフトでマルウェアのスキャンも行うと安心です。
6. 近隣のWi-Fiとの干渉
マンションやアパートなど集合住宅では、隣接するWi-Fiとチャンネルが重複して干渉が起こりやすくなります。「WiFiミレル」や「NetSpot」などの無料アプリで干渉を避けたチャンネルを確認できます。
7. サービス側の混雑（動画・ゲームなど）
YouTube、Netflix、Amazon Prime Videoなどが夜間に遅くなる場合、それはプロバイダのトラフィック制御か、サービス側のCDNが混雑しているためです。
8. DNSサーバーの応答が遅い
DNSが遅いと、ウェブサイトの読み込みが始まるまでに時間がかかります。Google Public DNS（8.8.8.8）やCloudflare（1.1.1.1）への変更で改善されることが多いです。
9. 接続中の端末が多すぎる
スマートフォン、タブレット、ゲーム機、スマート家電など、家庭内で同時接続される機器が多くなると、Wi-Fiの帯域が分散され、速度低下の要因になります。
10. プロバイダによる通信制限（スロットリング）
一部の格安プランでは、一定のデータ量を超えると速度制限がかかることがあります。これは特にモバイルWi-Fiや地方のプロバイダでよく見られます。
インターネットを速くするための具体的な対策
1. ルーターの設置場所と設定を最適化
- 家の中心部かつ高い位置に設置する
- 2.4GHzと5GHzを分けて利用端末に適切に割り当てる
- チャンネル干渉を避けて手動で設定
2. 可能な限り有線接続を使う
- デスクトップPC、ゲーム機、テレビなどはLANケーブル接続を推奨
- Cat6以上のケーブルを使用
- ノートPCにはUSB-LANアダプタを活用
3. 機器とソフトウェアを最新に保つ
- 3〜4年ごとにルーターを更新
- ファームウェアやドライバーを定期的に更新
- WindowsやmacOS、Androidも常に最新バージョンに保つ
4. 通信速度を定期的に計測する
- Fast.com、Speedtest.net、RBB TODAYスピードテストなどを活用
- 朝・昼・夜など複数の時間帯で測定
- 測定結果を記録してプロバイダに報告することで交渉材料に
5. DNS設定を変更する
- ルーターまたは端末でGoogle DNS（8.8.8.8）やCloudflare（1.1.1.1）を指定
- キャッシュクリア（コマンドプロンプトで ipconfig /flushdns）も有効
6. 接続端末の整理と優先度の設定
- IoT機器はゲストネットワークに分離
- リモートワーク用PCや学習用端末に優先帯域を割り当てる
まとめ：ネット環境の改善は「管理」がカギ
ネットが遅くなる多くの原因は、機器の老朽化や設定不備、環境の変化に対する対応不足にあります。少しの知識と定期的な見直しによって、通信環境は驚くほど改善されます。
速度テストや設定変更は難しいものではありません。手間を惜しまずネットワークを管理すれば、安定した高速インターネット環境を維持することができます。